議長・副議長研修会 報告
議員のなり手不足は住民自治の危機
全国町村議会主催の議長・副議長研修会が5月21日、東京国際フォーラムで開催された。今年は3名の講師の講演が企画され、一人は一昨年木曽町議会でもお呼びした江藤俊昭先生であり、主に議員のなり手不足対策が中心の内容であった。
議長 千村 孝男
副議長 中村 博道
江藤 俊昭氏(大正大学教授)
議員のなり手不足は住民自治の危機・打開の道を探る
1.議員のなり手不足を3つの危機ととらえる
- ① 増加する無投票・定数割れと潜在的なり手不足→全町村議会の危機
- ② 多様性を欠く議会では二元代表制の趣旨が損なわれる→町村にとっての危機
- ③ 度重なる無投票が地方自治の弱体を招く→県や国にとっても危機
2.その原因として
- ① なり手に響かない3条件→議員のやりがいが理解されない、旧来的な議会環境、低額の議員報酬など「やりがい・環境・待遇面」の遅れ。
- ② 地域コミュニティの限界→地域の担い手不足と女性進出の遅れ、家族・親族の反対による立候補断念など地域社会特有の原因。
- ③ 立候補、選挙における障壁→落選のリスク、必要な資源の不足など。
3.解決するには
- ① 議会の取り組み→検証組織の立ち上げ、幅広い情報発信と住民との交流を増やす、議会モニターなど議会応援団の形成、多様な人材発掘のためデジタル化や女性向け環境整備など。
- ② 町全体の取り組み→議会事務局体制の強化、議員報酬の改善、企業の立候補に係る休暇制度や各種規定の整備など。
帖佐 直美氏(弁護士)
ハラスメント 注意すべきポイント
1.ハラスメントとは
優越した地位や立場を利用した嫌がらせ、ハラスメントは相手を傷つけるだけでなく、議員自身、議会全体の社会的信用を損ねる。
セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメント、モラルハラスメント等新しい用語が次々生まれている。
2.自治体議員に求められること
選挙で選ばれた「良識の人」としての自覚を持ち住民の規範として行動する。法令を守り社会人として道徳や倫理観も大切な指針。
谷口 尚子氏(慶応義塾大学教授)
若者、女性、勤労者が参画する地方議会の実現
1.日本の民主主義の現状は
- ① 民主主義体制の制度は充実→憲法、議会制、政党性、普通選挙制度。
- ② しかし各種選挙は活性化していない→投票率の低下、無投票当選者数の増加、女性議員が増えない、議員の高齢化等。
- ③ 「民主主義」の課題→政府の評価や参加意欲が低い。権利と義務、参加と責任など主権者としての意識・参加意欲の醸成。
2.地方議員のなり手を増やすには
- ① 地方議員に関心ある人→男性25%、女性15%(2021年調査)地域貢献に意欲あり、議員職は重要と思う。
- ② 多様な人材が立候補しやすい環境整備→コスト(費用、時間など)やリスク(落選、家族への迷惑など)を乗り越える知恵や工夫、支援を。
- ③ 議会活動の在り方を変える→活動スタイルを柔軟にする-企業で働く人の議会活動の休暇への理解、議会・委員会の休日・夜間開催など。
全国の町村議会から
議長と副議長が集まって行われた研修会