総務経済常任委員会報告
人口減少対策の取り組みなど調査
島根県益田市、吉賀町などを視察
◯所管調査日
令和7年6月30日~7月1日
◯出席委員
委員長 / 松井 淳一
副委員長 / 大目富美雄
委員 / 原田 徹哉
委員 / 千村 孝男
調査の目的
消滅自治体から脱却した吉賀町
木曽町の人口は昨年2月、ついに1万人の大台を割り込んでしまった。町ではこの間、人口減少対策として子育て支援や定住・移住対策にとりわけ力を入れて取り組んできた。また、一般社団法人持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩先生には5年余りにわたって来町いただき、地域ごとの人口分析調査や住民を交えたワークショップを実施。「人口1%戦略」で人口が安定化されると言われており、地域ごとの目標を明確にしていただいた。ただ、そのためにはどのような取り組みをすべきなのか、具体的なアクションを起こすことができないまま現在に至っている。
そこで今回、あらためて藤山先生からアドバイスをいただくとともに、2014年に日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」に含まれていて、2024年の同報告では消滅自治体から脱却した島根県吉賀町などを視察する。同町では子育て支援や雇用対策、環境整備など人口減少対策に向けた具体的な取り組みを調査する。このほか津和野町にある未利用木材を活用したチップ工場などを視察する。
吉賀町役場で担当者から説明を受ける
視察先の概要
子どもと共に発展するまち
最初に島根県益田市にある一般社団法人持続可能な地域社会総合研究所に藤山浩先生を訪ねた。先生は移住者を増やすためには①住む所(住宅)②暮らしの魅力③働き場(仕事)の重要性などを具体的な先進事例を示しながら分かりやすく話してくれた。
次に島根県の西の玄関口、吉賀町を訪れた。同町は面積約336平方キロメートル、人口5500人余り。人口減少は今も続いているが、合計特殊出生率は1.95と全国平均を上回っている。平成29年度には出生者50人を数えた。吉賀町でもかつては県内の他市町や広島県、山口県への人口流出と急激な少子高齢化による人口減少が大きな問題になっていた。そこで10年ほど前から「子育て支援3本の矢」として子ども医療全額助成、保育料完全無料、給食費完全無料を実施。さらに今年度から3歳以上児に対する主食費無償化や育児用品レンタル助成補助金創設などを実施し一層充実強化を図っている。
また、町内にある吉賀高校では平成27年度から、町外県外からも生徒募集を開始。宿泊施設も整備し現在、全校生徒400人余りのうち約150人が町外から来ている。このように子どもと共に発展するまちを目指し、さまざまな取り組みを推進している。
このほか津和野町では小型バイオマスガス化発電プラントなどを視察した。
まとめ
人口減少対策の肝は結婚支援
藤山浩先生の話の中で住宅について、過疎債を活用して整備し20年余り経ってから譲渡する方法もあるという事例はとても興味深かった。町としても空き家バンクや民間活力の利用に加え、起債を活用した住宅整備がもっと必要ではないかと思う。
吉賀町が人口減少対策で一定の成果を上げている要因の一つは、きめ細やかな子育て支援策を講じてきたことが奏功したのではないかと考えられる。また、宿泊施設を整備し吉賀高校では町外から多くの生徒を受け入れしていることも大きな要因だと思う。木曽青峰高校でも来年度から県外生徒の募集が始まるので大いに期待したい。
また、同町は中国自動車道などの交通アクセスに恵まれ300人規模の工場などもあり外国人労働者も増えていて、これらも人口減少対策に貢献していると考えられる。
このほかの注目点は町の基本目標に「結婚への支援やそのための環境づくり」を明確に掲げていることだ。その必要性は認識しながらも、はっきりと結婚支援を計画に掲載して実践している自治体は余り聞いたことがない。吉賀町でもまだ大きな成果を上げるまでには至っていないということであったが、「結婚支援」を明確にうたい庁内横断的に取り組んでいくことは非常に重要だと感じた。今後、我が町にとっても結婚支援は人口減少対策の肝になるのではないかと考えている。